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本のカビとシミの違いとは?見分け方と正しい対処法

本のカビとシミ

 

いつもありがとうございます。ユモカンパニーです。

 

大切にしている本に茶色い点々や白っぽい汚れがついていると、ショックですよね。

 

「これってカビなのかな?」「他の本にうつるのかな?」と不安になることもあるかと思います。

 

実は、本につく汚れには主に「カビ」「フォクシング」と呼ばれるシミの2種類があり、それぞれ対処法がまったく違います。

 

この違いを知らずに間違った掃除をしてしまうと、かえって本を傷めてしまうことも。

 

この記事では、カビとシミの正しい見分け方から、自宅でできる安全な除去方法、そして湿気対策まで、大切な本を守るための知識をわかりやすくお伝えします。

 

この記事のポイント!

  • 茶色い点状のシミ(フォクシング)と危険なカビの決定的な見分け方
  • 冷凍庫や紙やすりを使った自宅でできる正しいクリーニング手順
  • 放置することで起こりうる健康被害とアレルゲン拡散のリスク
  • 湿度60%以下を維持してカビを寄せ付けない具体的な予防策

 

【重要】健康への影響について

 

カビは衛生上のトラブルの原因となる可能性があります。

 

作業を行う際は必ずマスクと手袋を着用し、不安を感じた場合は直ちに作業を中断して専門家にご相談ください。

 

本のカビとシミの違いをプロが徹底診断

 

本棚から久しぶりに取り出した本を見て、「あれ、こんな汚れあったっけ?」と驚いた経験はありませんか?

 

実は、本の汚れには「緊急性が高いもの」と「そうでないもの」があります。

 

まずは、その汚れが「カビ」なのか、それとも「ただのシミ」なのかを正しく診断することから始めましょう。

 

茶色い斑点はフォクシングという現象

 

ページの余白や断面にポツポツと現れる、赤茶色や黄色の斑点。

 

これは専門用語で「フォクシング(Foxing)」と呼ばれる現象です。

 

主な原因は、紙の製造過程でパルプに混入した微細な「鉄分」や「銅」などの金属粒子です。

 

これらが時間の経過とともに湿気を含んで酸化(サビ)を起こし、周囲の繊維を変色させることで発生します。

 

特に19世紀以降の機械製紙によく見られる現象ですが、日本の古書でも決して珍しくはありません。

 

フォクシングの大きな特徴は、「紙と一体化している」こと。

 

指で触ってもデコボコしておらず、紙の繊維そのものが変色している状態です。

 

これは内部で起きた化学反応の跡であり、表面に付着した汚れではありません。

 

「経年劣化」の一種なので、基本的には他の本にどんどん感染して広がる心配は少ないです。

 

少し見栄えは悪いですが、本の歴史として受け入れるのも一つの考え方ですね。

 

名前の由来

 

キツネ(Fox)の毛色に似ていることから「フォクシング」と名付けられたと言われています。

 

海外の古書市場では一般的な用語として定着しています。

 

ふわふわしたカビの臭いと特徴

一方で、絶対に放置してはいけないのが「カビ(Mold)」です。

 

フォクシングとは違い、カビは現在進行形で生きている菌(真菌)です。

 

白、黒、緑、グレーなど色は様々ですが、最大の特徴は「立体感」があること。

 

虫眼鏡などでよく見ると、綿毛のようにふわふわしていたり、粉っぽかったりします。

 

これは「菌糸(きんし)」と呼ばれる根っこのような構造や、「胞子(ほうし)」の塊です。

 

そしてもう一つの決定的な違いが「臭い」です。

 

カビには特有の「土臭さ」や「湿った墨汁のような不快な臭い」があります。

 

本を開いた瞬間にムッとする臭いがあれば、目に見えなくてもカビの胞子が潜んでいる可能性が高いです。

 

湿度が70%を超えると急激に繁殖し、本を分解してボロボロにしてしまうため、見つけたら即座に対処が必要です。

 

虫の糞とカビを見分けるポイント

 

カビと間違えやすいのが、実は虫のフン(ハエやゴキブリの糞など)です。

 

これは非常に小さな黒い点ですが、横から見るとポコッと盛り上がっていて、紙の上に「乗っかっている」状態です。

 

以下の表で、それぞれの違いを整理してみましょう。

特徴 フォクシング(シミ) カビ 虫の糞
見た目 茶色のシミ・平ら ふわふわ・粉状 黒い点・盛り上がり
原因 酸化(サビ) 菌の繁殖 排泄物の付着
感染性 ほぼなし あり(危険) なし

 

カビやフォクシングは紙に染み込んでいますが、虫のフンは表面に付着しているだけなので、カッターの刃先などで優しく弾くとポロリと取れることがあります。

 

ただし、無理にこすると黒く伸びてシミになってしまうので注意が必要ですね。

 

放置するとお部屋の空気が汚れる原因に

「たかが本のカビでしょ?」と侮ってはいけません。

 

本に生えたカビの胞子は、ページをめくるたびに目に見えない埃のように空気中に舞い上がります。

 

そのままにしておくと、お部屋の空気が汚れ、衛生的によくありません。

 

特に小さなお子様がいるご家庭など、清潔な環境を保ちたい場合は、カビの生えた本は早めに対処することが大切です。

 

公的機関の呼びかけ

 

快適な住環境を保つため、カビやダニへの対策が推奨されています。(参考:厚生労働省『(カビ)及びダニ対策』

 

売るか捨てるか?古本の判断基準

カビが生えてしまった本をどうするか、悩みどころですよね。

 

私の経験上の判断基準をお伝えすると、「小口(断面)だけのフォクシング」なら、まだ救える可能性があります。

 

後述する研磨できれいになることが多いからです。

 

しかし、ページの内側(ノドや文字部分)にまで黒いカビがびっしりと入り込んでいる場合や、ページ同士が湿気でくっついてしまっている場合は、残念ながら廃棄を検討したほうが良いでしょう。

 

無理に残しておくと、隣り合った大切な本にまでカビや湿気を移してしまう原因になります。

 

保管スペースに余裕がない場合や、状態の悪い本の処分を考えている方は、以下の記事で収納術についても触れていますので、参考にしてみてくださいね。

 

関連記事:読まない本の収納どうする?傷ませない保管術

 

本のカビとシミの違いによる除去と予防

ここからは、実際に汚れを見つけた時の具体的な対処法をご紹介します。

 

「とにかくアルコールで拭けばいい」と思っている方も多いですが、実はそれが一番危険な場合もあるんです。

 

冷凍庫でカビを殺菌する緊急処置

「ふわふわしたカビ」を見つけたら、掃除機で吸う前にまずやるべきなのが「冷凍」です。

 

これは海外の図書館などでも採用されている保存科学に基づいた方法で、カビを殺す(あるいは休眠させる)のに非常に効果的です。

 

カビは水分がないと生きられないため、凍結させることで細胞を破壊したり活動を停止させたりできるのです。

 

冷凍殺菌の手順

 

  1. 本をジップロックなどの密閉できるフリーザーバッグに入れます。
  2. 空気をできるだけ抜いて、しっかりと口を閉じます(二重にするとより安心)。
  3. 家庭用の冷凍庫に最低でも24時間、できれば1週間〜2週間入れっぱなしにします。

 

重要なのは、冷凍庫から出した後です。

 

袋に入れたまま、常温に戻るまで絶対に開けないでください。

 

冷たい本のまま袋を開けると、一気に結露して水浸しになり、カビが大喜びする環境を作ってしまいます。

 

数時間〜半日放置し、完全に室温に戻ってから、屋外でマスクをして死滅したカビをブラシなどで払い落としましょう。

 

断面のシミはやすりで削って除去

本の断面(天・地・小口)にある茶色いシミ(フォクシング)や日焼けは、「紙やすり(サンドペーパー)」で削り落とすのが一番きれいに仕上がります。

 

古本屋さんがよくやっている「研磨」という作業ですね。

 

研磨機がなくても、手作業で十分きれいになります。

 

ホームセンターで数百円で売っている紙やすりを用意してください。

 

まずは#120〜#240(粗目)を使って、シミの層を一気に削り取ります。

 

この段階では削り跡が残りますが気にしなくて大丈夫です。

 

次に#400〜#800(細目)を使って、表面をツルツルに整えていきます。

 

#1000以上の細かい番手で仕上げると、断面が光沢を帯びて汚れが付きにくくなります。

 

研磨の注意点

 

必ず「一方向(背から小口へ)」に動かすこと。

 

往復させると、手前に引く時にページがめくれ上がって破れてしまいます。本をしっかり固定して行いましょう。

 

無水エタノールの正しい使い方

表紙(ツルツルしたカバー部分)のカビ取りには、一般的なアルコール除菌スプレーなどが使えますが、本本体の紙には「無水エタノール」を使います。

 

ドラッグストアで手に入りますが、これには水分がほとんど含まれていない(99.5%以上がエタノール)ため、すぐに揮発して紙がシワになりにくいんです。

 

使い方は、キッチンペーパーや柔らかい布に少量の無水エタノールを含ませ、汚れた部分をポンポンと優しく叩くように拭き取ります(ゴシゴシ擦ると紙が毛羽立ちます)。

 

ただし、古い本やインクの種類によっては滲んでしまうこともあるので、必ず目立たない場所でテストしてから行ってください。

 

水拭きが厳禁な理由と失敗例

一番やってはいけないのが、濡れた雑巾やウェットティッシュでの水拭きです。

 

紙の主成分であるセルロースは、水を吸うと繊維が膨らみ、乾くときに収縮して歪みます。

 

これが「波打ち」という現象で、一度なると元の平らな状態には戻りません。

 

さらに恐ろしいことに、水分はカビにとって最高のご馳走です。

 

「汚れを取ろうとして水拭きしたら、数日後にカビが爆発的に増えていた」というのはよくある失敗談です。

 

また、濡れた本をドライヤーで無理やり乾かそうとすると、熱で紙が劣化してパリパリになってしまいます。

 

水と熱は、本にとって大敵だと覚えておきましょう。

 

湿度管理でカビを予防する環境作り

カビやフォクシングの最大の敵は「湿気」です。

 

カビは相対湿度が65%を超えると活動を開始し、70%を超えると爆発的に繁殖します。

 

逆に言えば、湿度を60%以下(理想は50%前後)に保っていれば、カビはほとんど生えません。

 

簡単な予防策

 

隙間を作る: 本棚を壁から5cmほど離して設置し、裏側に風の通り道を作ります。

 

詰め込みすぎない: 本棚に本を詰め込む際は、指一本入るくらいの余裕を持たせます。

 

換気と循環: 晴れた日には窓を開け、サーキュレーターで部屋の空気を回します。特に本棚の足元や隅は空気が淀みやすいので重点的に風を送りましょう。

 

特に、梅雨から夏にかけては除湿機やエアコンが必須です。

 

本棚専用の除湿剤を使う手もありますが、水がたまるタイプはこぼした時の被害が大きいので、シリカゲルなどの乾燥剤タイプがおすすめです。

 

本の保管環境については、以下の記事でも詳しく解説しています。

 

関連記事:読まない本の収納どうする?傷ませない保管術

 

本のカビとシミの違いを知り愛書を守る

本につく汚れには、経年による「シミ(フォクシング)」と、環境による「カビ」の2つがあり、それぞれのリスクと対処法が違うことをお伝えしました。

 

フォクシングは「本の年齢」としてある程度許容できますが、カビは他の本や私たちの健康にも関わる重大な問題です。

 

「変な臭いがするな」「ふわふわしているな」と思ったら、迷わず隔離して冷凍やクリーニングの対処をしましょう。

 

正しい知識とちょっとした環境作りで、大切な本はずっと長持ちします。

 

まずは今日、お家の本棚に湿度計を置いてみることから始めてみませんか?

 

それだけで、愛書を守る大きな一歩になりますよ。

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